出生時間の予測
いよいよ、入院となったら、ほとんどの方が質問されるのは
「いつ生まれますか」
です。
この質問は非常に答えるのは難しいのです。私の場合、明らかにもうすぐで生まれると確信を持ったときにしかお返事しないことに決めています。予測はある程度できるのです。内診所見と陣痛状態、赤ちゃんの大きさ、お母さんの体力などから総合的に判断してある程度の時間は予想します。
が、言わないのには理由があるのです。それは、今、みた状況がずっと続くのであれば、という条件が必要になるからです。
スムーズなお産になりそうで、教科書的な進み具合だと予想しても、途中でお母さんの体力が落ちてしまうかもしれません。陣痛が弱くなるかもしれません。赤ちゃんの頭が骨盤の中でうまく回らなくなるかもしれません。そうならないように、助産師はついているのですが、やはり、どうしても防ぎきれないときはありますし、なぜ?こんなことに?と首をかしげることもよくあります。それが人間の力ではどうにもならないことではあると思うのです。
そんな状態で「あなたは19時ぐらいに生まれますよ」と何時間も前に宣言していたとします。その時間になっても生まれていなかったらどんな気持ちがするでしょう。気持ちが落ち込んでしまうのです。助産師が予測時間を間違ったということで責められるのは仕方がないです。事実だから。問題は「もう、無理」とお母さんや家族の方が思って必要のない促進剤の使用や帝王切開を切望することです。お母さんが産む気になってこそ、弱まった陣痛も元に戻ります。赤ちゃんも産道を降りてきます。マイナスのイメージはマイナスの結果しかもたらさないのです。
これから先に何が起こるかわからない状況で分娩時間を伝えることは、今、そこに存在するお母さんたちには希望になるけれど、予測時間を越えてしまったときには一転して失望にかわるおそれがあります。分娩時間を聞いて、その時間を越えてパニックになってしまった方を何度もみたことがあります。そこで思ったのは分娩時間をあらかじめ伝えることで満足するのは誰だろうということです。私には当たったときには予測時間を伝えた人間の自己満足にしかならないように思えます。「ほら、言ったとおりでしょ?」という。それ以上に何か、得ることがあるでしょうか。
「ただ、あなたが、時間を間違えていうのがいやなだけでしょ」というご意見もあると思います。人の考え方はそれぞれです。絶対に何も言わないというわけではありません。大まかな予測を伝えたりはします。「今晩中かな?」とか「今日のお昼ぐらいかな?」とか。
助産師教育の中では受け持ちの産婦さんに出会った時点で、その方のケアをどうしていくのか(助産計画といいます)、分娩予測時間を指導者さんに伝えなければなりません。それができないと受け持たせてはもらえません。なので、自分の中ではある程度の予測時間はもっています。それは、行き当たりばったりで準備をしていくのではなく、お母さんに不安を与えないようにいろいろな準備をしていくためです。「そろそろ、分娩室に移動したほうがいいかな?」とか、「お産の準備はあらかじめしておいたほうがいいかな?」とか。目の前で助産師がばたばたすると、お母さんは気もちるし、不安ですから。
つらい時間が早く終わりたい気持ちは十分にわかります。でも、お母さんには今、自分の身に起こっていることに対応していただきたいのです。痛みがあればマッサージをする、しんどくなったら休む、赤ちゃんにしっかり酸素を送るように呼吸法をしたり、リラックスをするなど・・・そして、周りの家族の方も「何時に生まれますか?あとどれぐらいで生まれますか?」とせかしてあげないでいただきたいのです。焦るのはお母さんですから。
ゆったりと、自然の赴くままに身をゆだねるということが大事ではないでしょうか。
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